「あ、翼に会ってからにしよ、甘い物好きだからお菓子食べたいなら頼んであげたい」


そうか、優しいなと両端から帰ってくる返事。
本心ではいいからすぐに住所を送ってしまえと思ってる。


買い物は済んだ、今日は照樹がノンアルコールで車を出してくれるらしいから。


お腹空いた、先に飲んでよ、の一言でお店に向かう。


「居酒屋でいいのか、寿司とか懐石とか」


「いや焼き鳥でしょ、刺身もあるし」


生中浴びたいし、なんて。
浴びる程飲む宣言をしたのは初出勤前日の新入社員としてはどうなんだろう。


なんて指摘する人間はいないから、やっぱり甘やかされてると思う。


騒がしいがいつもの店と伝えれば分かるくらいには照樹、社長、翼の中では定番。


しっかりと個室もあるから照樹もよくメンバーを連れてくるらしいし。


「さ、俺の可愛い天使、おかえり」


「ただいま、カンパーイ!」


カシャン、ジョッキがぶつかる音。


それと同時に鳴る照樹の携帯。


「ップハ〜、…翼着いたってよ」


惜しい、一足遅かった!と上機嫌な咲名、酔うには早すぎるけどリラックスしてる証拠。


照樹もビールテイストのノンアルコールでのどごしだけを楽しみながら携帯片手に、メッセージを返す。


足音が聞こえた直後に開いた戸、お疲れ様っす〜と雑な挨拶と一緒に被っていたバケットハットを脱いだ翼、ん?っと人数に違和感を覚えたのか顔の確認をして、咲名と認識するまで。


「………さ、な?」


「ただいま」


「え、ちょ、待って…咲名!?」


そうだってば、と苦笑い。


うぉーマジか!という声がよく通る、ボイトレの成果だなって笑う照樹の腕を引っ張り、席変わって!と無理やり咲名の隣へ着席。


「なんだよ帰ってくるって聞いたのつい最近だよ!?こんなすぐだったのか!」


と、熱烈なハグ、親子揃って絞め殺す気かよって言いながら、咲名も腕を回し返して。


「会いたかったぁ〜」


涙目で、咲名の両頬を包みながら。
確認するかのようにじっと見つめる。