荷物を置いて着替えて、欲しいものがあれば今のうちに買いに出るぞ、という照樹のお言葉に甘えて。


リビングに置かれた大きなリュックが一つ、以上。
明日も着るためにハンガーにスーツをかけて、来た時と同じ服に着替え終わって。


「パジャマない、今日は借りる」


「お前は荷物の量が旅行以下の自覚は?」


「旅行程度に支度するって言ってたろ」


「こっちに住むんだ、買えばいいし送ってもらえばいいんだし、数日分の荷物はしっかりと持ってる!」


下着やタンクトップやTシャツ、そして羽織り物は嵩張らないし。
ボトムスは言ってた通り替えを入れれば二本のみ。


クスクス笑われる身軽さにムキになる。
慣れてるからこその身軽さを馬鹿にされた気がして。


女は荷物が多いはずだろう?と言われ、まるで女らしくないと言われた気分になったせい。


「行ったり来たりの生活してたのにどっちにも荷物持って動かないよな」


「残してもいかない、基本的になんも持ってねーんだよ」


「地元にみんな置いてあるだけ」


CDとか、アルバムとか。
いちいち持ち歩かないものは全部地元。


お気に入りの靴や服は全部イギリス。


住むところが決まってから送って貰う予定。


「携帯はこれ、業務用だから電話とメール機能しかないし今のも持ってればいい」


「ん、必ず持ち歩きます」


ポケット生活はもう出来ないなって、タバコと携帯と財布があればどこにでも行ける咲名、根は真面目だから肌身離さずを誓う。


「家賃光熱費は研究生たち同様定額を給料から引き落とし、携帯も経費で落ちる。
給料は他の社員が入ってきた時と同じだけど、昇給や働き方で額は変わる」


「残業手当はしっかり払うし、休日手当も出るし稼げるぞー」


「あ、給料貰えるんだ」


そりゃそうか、働くんだしって。


「全部世話になるし家族だから、給料制度とは思わなくて」


「言えば欲しい時にやるけど」


「ううん、ふふ…私まだ結構持ってるし大丈夫」


お小遣いばらまいてたの忘れた?と。
過去に貰ったお金が貯蓄に回るほど。