自由に羽ばたくキミが

「門限は」


「ない、けど外出外泊はコンセルジュが把握する」


「交通の便は」


「事務所や現場へは、受付に一言いえば専用のバンが走る、送迎付きだ」


「いやだから、出かける時に困るじゃん」


「遊びに出るような場所も時間もない」


「…そんなに?」


「いや冗談だけど。あと身内以外は招待禁止だ」


「照樹に全部投げたんだ、文句は言うなよ」


それな。


だってまさかここまで管理されるなんて思ってもなかったし。
けれど自宅に帰る、という選択をしなかったのは自分な訳で。


「家よりマシか」


「母ちゃん泣くぞ」


「それは大丈夫、一緒に居なくても平気なのは向こう」


はぁ、とため息を零すのは父親。
幼少期の境遇を考えると今でも下手に口出し出来ない。


現に日本に帰ったって住居が一緒だったのは高校までだし、時間があれば《地元》に帰ってしまうのだから。


その地元が、母親の出身地で実家である事がまだ救いではあったけれど。


「俺も寂しいんだがなァ」


「あなたの元へ帰ってきたんだ、それは一番文句言わせないよ」


寂しいなんて、それこそ今更。


実の父親はもう、この世にはいない。
最期は一緒に過ごしたかったから渡った海を、今度は育ててくれたこの人の為に戻ってきたんだ。


パパはもっと寂しい思いしてたんだ、それは理解しろ、というのが娘の気持ち。


「いつまでも元気でいてくれないと困るよ、もう頼れる人がいないし、愛してくれる人だって胸張ってこの人だって言えるのは親父と兄貴しかいないんだから」


照にぃもか、と笑う咲名に、そうだぞ、と答える運転中の照樹。
おい俺は、と思ったそばから仲間に入れてくれたからちょっとめちゃくちゃ嬉しくて可愛い。


母ちゃん泣くぞ、とはもう言わない。
親が子供を愛さない訳ない事は、分かってる咲名だから。


それでもそこに母親を含まないのは、咲名のプライドであり二人の関係性であって。


心の底では分かり合ってるはず、そうであって欲しいと願う父親。