自由に羽ばたくキミが

「言われ放題だな」


可愛い我が子を、とは言うけど顔は笑ってる。


ふぅ、と一息ついたところで芋くさいのが来たなという声は、しっかりと本人には届いていたが。


言われても仕方ないから腹も立たない。


「あいつら、ったく。
もう少しの辛抱だぞ咲名」


自分が選んだスーツのせいでもあるくせに、気にするなよみたいなフォローをする照樹。


「もう何でもいいよ、はぁー一気に疲れた!
なにあのキラキラ星人、キラキラ軍団!」


まだ二グループもあんなのがいんの!?と、久しぶりに同世代の日本人に触れただけでも疲れるのに。


やる気オーラがもはややる気ビームになって、咲名に刺さりまくって。


「息するのもしんどい、何あれなんか申し訳なくなってくる、私が補佐勤まんの?」


全然分かんない、何喋っていいのか何から興味を持てばいいのか何をサポートしたらいいのか。


全然分かんない!と珍しくご乱心。


「あの夢見る感じ地元を思い出すよ、眠気も飛んだわ」


「そうだお前、地元とは?」


「別に、連絡取ってんのもいるけど疎遠だよ。
ジャンルが違うだけで男前は何人かいたんだけど。あんな美しい生き物はいなかったから」


視界に入るだけで浄化されそうだけど、逆にお目汚ししてしまうわなんて。


余程身近にいないんだろう、と言っても兄貴はアイドルの卵。
ただ元ヤンなのと、しばらく会っていないから。


免疫がない、というのがご乱心の理由。


「俺からしたらお前の周りのイカちぃおっさんやバンドマンの方が仲良くなれねーわ」


「なんで、音楽流して楽器触って歌って踊ってお酒飲めばもうブラザーよ」


「一緒だ一緒、LIBERAだってな」


いやぁどうだか、なんて言った咲名は冷やされてもいない会議室の暑さに耐えかねてジャケットを脱いでしまう。


「半袖は間違いなく着れないねェ」


「出来れば俺も見たくねェなぁ」


そりゃそうだ、ごめんごめんなんて。


身体に傷をつけた娘を拒みたくはないけれど。
やっぱり親には受け入れ難いし娘としてもそれはよく分かってる。