数年後〜







「本人がやる気ねぇっつったって、じゃあなんであんな事したんだよ」


「小遣い目当てじゃなかったか?なんかまとまった金欲しいなって思ったら、おいでよって言われたからつい…とかって言ってたけど」


「そんな理由で乗っといてその後のビッグビジネスはなんでNOなんだよ…」


あとなんの金だよ困らせた事ねーよ、と眉をしかめる中年男性、とある芸能プロダクションの社長。


「人が変わったように暗い子になって、しかも今引きこもりのニートだろ?」


「もうなんでもいいからよ、せめて元の明るくてひょうきんな奴に戻って欲しいぜ」


そんな話をするのは近所の居酒屋。
お酒を引っかけながら、《父親》としての心中を明かす。


相手は甥っ子に当たるプロダクションの社員、規模の小さな会社だから信頼のおける身内に重役を託してのこと。


父親と従兄弟としての言葉にしては些か距離のある言い方だけれど、それは理由あっての事で。


ただ、頭を悩ませ心配するのは愛あってこそ。
その辺は《本当の》家族と何ら変わりなく本物の家族愛親族愛。


「自分でも動いてたって事は嫌いじゃァないはず、ただ何があったのかは一切言わないし、ギャラの使い道も分かんねーまま…はァ」


「まーでもさ、性格を考えれば本人が一番分かってんじゃん?ちょっと強引にでも引っ張ってきなよ」


間違いなく本人が一番変わりたいはずよ、なんて言う従兄弟としての言葉、歳が近いからって仲良くして、可愛がってくれたのは父親としても感謝するべきところ。


「俺が言い付けるとなァ、前科もあってまず裏を勘繰られる、俺の言い付けはいやいやのクセに!あんなでけーことはひとつ返事ってか!?」


これは父親としての嫉妬も込めて。


「うわでた、酔っ払うとすぐその愚痴」


もう帰ろうぜ、俺にいい考えがあるって。
家ではなく会社に戻り、ミーティングするぞって。