自由に羽ばたくキミが

事務所を出たあとは、毎月の雑誌撮影で使われるビルやスタキャチャンネル、と呼ばれる歌番組を撮影してるスタジオに。


そのレッスン場となる隣りのビルをサクッと見て。


研修生専用らしい事務所に案内された。


今のところ兄である翼の姿は確認出来てないけど、きっと翼は咲名を見ても気付かないかもしれないと三人で笑い合う。


「タイミング悪かったな、集まってやがる」


グループ所属前の子達がレッスンしてる姿はドア越しに見てきた咲名、フレッシュ過ぎるオーラに眩しいと錯覚したほどだし。


自分より歳が下の子達が必死になって踊ってる姿に、少しだけ過去の自分と重ねて。


必死になれる事に羨ましいとさえ思ったのだけれど。


集まってる、というのはグループに所属してるメンバーが集まってると言うこと。


広い会議室に、大人も混ぜずにミーティング中。
ホワイトボードには何かのフォーメーションを決めるような図が書かれていて、それを囲うように長机に座ってる顔は…咲名からは見えない。


「翼がはしゃぐといけねーなァ」


「担当だけ呼びますか」


「帰って来るかも、だけは言ってあるけどいつかは言ってねーから」


「あいつが一番立ち振る舞いが分かってるはずだから大丈夫だろうけど」


「他人のフリは無理だけど、まぁなんとかなる」


わかってる、大丈夫と咲名も覚悟はしてるみたいで。


「今日の夜とかさ、逆にもう会っといて。
働くことだけ黙っといて、…先に顔合わせたら現場で会ったときも冷静にいられると思うんだけど」


それで行こう、と今日は四人で食事に行く事が決まったのはいいが。


顔合わせだけでも、と照樹が担当グループを呼びに行ってる間に別室に待機。


事務所には他のグループのマネージャーがいて、社長が直々に咲名を紹介。


娘を社員として紹介するのが楽しいのか、危なっかしいけどノリノリなので大人しく愛想笑いを浮かべておいた。