自由に羽ばたくキミが

「まぁ詳しくは企画として立ち上がってから。
もちろん常にずっと撮影なわけないから、まずは俺の補助というかアシスタント的な立ち位置で現場を覚えて貰う。
こんな感じだけど意外と野生児みたいな所もあるし、音楽に関しても感性がいい」


野生児?なんだと?と、たった今から上司になった人に食ってかかるわけにはいかないし、否定も出来ないからそこに関しては目をつぶった咲名だけど。


「感性がいいと言っても、好きだったと言うだけで。特別な知識がある訳では無いので良い悪いも分からないし好みによります、浅く広く生きてきました」


心の中で、親族三人が三様の舌打ちを。


「ちなみにアイドルの知識は全くありません、トレンドは分からないし興味を持ったこともないです」


「…興味ないって」


「やな感じ、馬鹿にしてる?」


「馬鹿にしてるんじゃなくて、接点がなかったというか」


「ぶっ…悪い」


お前の兄ちゃんアイドルの卵だけど、という意味での笑い、両端の重役から。


「た、楽しみにはしてます、見たことが無いからこそどんな感じなのか」


「ファン目線も困るんですけど」


「イケメン目当てでこの仕事されるとねぇ。
写真なら私達でも撮れるのに、まぁいいけど」


「…出過ぎた事を、すみませんでした。
人生の半分を海外で過ごしています、まずは日本語をもう少し勉強しようと思いますので」


よろしくお願いします、と頭を下げたあと。
遠い方を見るような、もう話す事は無いというような。


他所を向いてしまった咲名、直接言っては来ないのに、絶妙に聞こえるレベルの小声で嫌味を言ってくる。


自分たちの仕事にプライドを持ってやってるのは働きぶりからも分かってはいたけど。


三グループそれぞれに三、四人の女性スタッフがいて、グループ同士は垣根を越えて仲が良いのにスタッフごとの派閥で現場で会えばバチバチさせてるのは知っていた。


そんな事を煩わしいと、きっと咲名はそう思うだろうと忠告していたのに。


まさか同じ現場で働く咲名にもこうも敵視されるとは思ってなくて。