自由に羽ばたくキミが

「咲名、お前昔よく写真撮ってたよな」


「え!?う、うん…ライブフォトっつーか、仲間の写真とかを」


パパがカメラくれたから、ハマってたって。
今日もしっかり持ってきたし宝物の一つ。


肩を引かれ、小声で聞かれるのはそんな事。
え、まさかカメラマン?そんな腕はないんだけど!?


と伝える間もなく、二人の小さなミーティングは終わり。


「オフショットを…撮らせたい」


ん?なに?オフショットて何ショット?みたいな。
ポカーンと、照樹以外の空いた口が塞がらなくなってる。


「あいつらのコンセプトはグループ名通り、自由だ。飾らずにありのままでいる姿を、自由に楽しみながら夢を追いかける姿を写真に収めて、いつかメディアに発信したいと思ってる。


それはデビューしてからじゃなくてデビュー前から、というのに意味を持つと思っている」


「それは新しい企画ですか?正式に決まった事ならそれなりに…編集社との打ち合わせだって」


「その辺はおいおいな、まずはSNSで専用アカウントを作ってもいいと思ってる」


「直接な収益に繋がりませんが、よろしいんですか?」


「楽しそうなあいつらを、純粋にファンに届けたいと思った」


「………それは賛成!」


元気な男の子、キャップを斜めに被って、太めのデニムにTシャツ。


日本にいた頃の仲間に近いおかげで仲良くなれそうだと見た目で判断した咲名はその元気な姿に確信を持てた。


「その為に、久利生さん?を?」


海外で写真を学んでた?学校もそっち系?専攻は?という隠れていないヒソヒソ声が重役二人と本人に届く。


「特に専攻して学んだ訳じゃない、けど肌で感じていたものは同世代ではまず経験出来ない事が多かった、よな?」


あの日の事を言ってんならそりゃそうだけど。


こちとら身体の色んなところに絵が描かれてるようなおっさんとか!薄暗くて湿っぽいライブハウスとか!小汚いボサボサ頭振り回してギターソロをカマしてるような!


そんな写真しか撮ってねーけど!?