自由に羽ばたくキミが

「お前、言ってないのか?」


「あんまりちゃんとは…派閥があるくらいとだけ」


「女性スタッフの職種とかよ、現場の雰囲気とか」


「…ま、まぁ見れば分かるし別に、俺いるし」


「戦闘服がこれじゃあ、なぁ…」


知らねーからな、そこは俺管轄外だからな、なんてコソコソと話す重役二人。


そんな姿を不思議そうに見てる咲名だけど、この後すぐに見た目でこんなにうるさい理由が分かった。


言っておいて欲しかったとか、こんな姿を止めて欲しかった、とももちろん思ったけれど。


別に無頓着って訳ではないし自分なりのお洒落をして楽しんでいた咲名にとっては。


あんたら職場に何しに来てんの?え、それが正装なの?と現実逃避したくなるくらい。


《生きる世界》が《ある意味》で違っていて。


元々の趣味趣向が違うし好みが違ったって別に働くことに支障ないと思っていたのに。


昔からよくあったハーフだからとか、生まれた環境とかではない理由で馴染めないなんて、思ってもなかった。


なにより、咲名自身がうわぁ仲良くなれそうにない、なんて。


一瞬で萎縮してしまったのだから。


そういう所含めて。


「あいつはある意味強いからなァ、一人で飯や買い物どころか海外にもへっちゃらで行っちまうくらいだから…心配はしてねーけど」


「逆に周りに合わせることをあんましないっすからね、そんなところも変わるといいんだけど」


「おー、生きづらさを自分で助長してる節はあるよな」


「人見知りって本人は思ってるらしいけど、はぁ」


隣に連れてフロアごとの案内、それなりに慌ただしくしてるけれど重役二人の登場と、謎のイモ娘に行き交う人達はとりあえず挨拶のみ済ます。


「…イギリスに帰りたい」


「「はえーよ」」


小さな子が、お家帰りたいってグズるみたいに。
海の向こうを思い浮かべる怖さったらない。