自由に羽ばたくキミが

「これは無いわ、罰ゲーム?え、わがまま言った腹いせ?」


わがまま言った自覚あるんだ!?と驚きつつ、そんな事ない!と否定する照樹。


「今朝急遽用意したんだ!姉ちゃんが就活で着たやつ借りて…カバン1つで来るって言うからスーツなんて持ってくるわけないよなって!身長の事考えても…その!」


「TPOに合わせて用意しておいてって頼んだのは私だけど、英国のフォーマルは王室を参考にする事が多いからこれはさすがに」


ふっくらしてる照樹の姉、肩は余ってるし、スカートは持ってないと落ちそうだからベルトをして、上着で隠す。


普段はラフでもスマートな国を行き来していた咲名にとっては違和感しかない。


けど身長に合わせたって言う割には。


「スカートは短くない?」


「足なげーよ、お前」


上着のお腹周りもブカブカだからボタンを止めても浮いてしまって寸胴に見える。


なのに、パンプスはピンヒールでかっこよくて。


「色もグレーかぁ、私のしばらくの仕事着…リクルートスーツかァ。何故か靴のサイズはピッタリ、就活中の学生より酷い」


「悪かったって、作ってやるから!数日ならなんとでもなると思ったんだよ!」


「いやいいよ、最初だけ…挨拶回りだけのつもりでいいんでしょ?」


髪の毛も結っとこ、とふんわりさせていた長い髪を一つに纏めて。


スッピンの顔に眉毛と少しだけ血色を足して。


前髪は七三で分けて、多い方をこめかみでピンで止めて、終わり。


髪も顔も、ビジネスや普段はびっくりするほど味気ないのも英国あるある。


「髪は気にしなくても良かったんだけど」


降ろしてた方が可愛いからやんわり伝えたのに。


「いや純粋に暑い、無理」


「おい俺の天使がクソだせぇじゃねーか!」


着替えた後、社長室の前で待ってた社長、満面の笑みで待ち構えていたのに着替えた姿を見た途端固まる顔。


「素性だけじゃなくて見た目まで偽るのか?」


「せっかくならドレスアップして偽りたいわ、まぁどうせ仕事なんて着飾る必要ないんだし」


裏方じゃん、もうずっとこれでもいいかも?と悪戯に笑う咲名。