My Angelとしか紹介しなかったボーカル、歳的にも隠し子じゃないかと騒ぎ始めたメディアを鼻で笑う。


『あんな天使を隠す理由がどこにある?まぁ本人が隠れてしまってはそう言われても仕方ないけどな!』


AHAHA~と笑い飛ばして終わり。


そう、わがままを通してあんな大舞台に立たせておいて、そのあとは知らん顔。


プロダクションからのオファーも、ステージへのオファーも、何もかも。


本人の意思として、全てシャットアウト。
あの伝説の日に立ち会えた数万人がどれだけ願おうと。


その後全く表舞台に上がることはなくて。


しっかりと映像化されたし、ネットにも上がってるので顔は割れてるのにどうしても見つからない。


手掛かりは腕に施された完成前のタトゥー、日本で言えば高校は卒業してるくらいの歳で、目を引くほどの美貌だからそこら辺を歩いただけで話題になりそうなのに。


誰もが思った、もう一度あの歌を、声を聞きたいと。


あの歌声に魅了された全世界のメディアが躍起になって探しても。


ディフェンスは硬く強く、誰一人突破出来る者はいなかった。


そしてその話題すら、時が経てば持ち上がることもなくなって。


結果隠し子としての噂が独り歩きしたままそのバンドも人気絶頂の中解散してしまう。


解散の理由が、充分稼げた、ちょっと休憩、なのだから。


もうこいつらに何かを求めても仕方ないと諦めた関係者、ビジネスとして言えば大きな功績を残してくれたのだから、気まぐれに付き合ってふらっと再結成されることを願おうなんて。


マイペースを押し通す彼らを止めれる人間は、誰もいなかった。


そんな伝説バンドの、伝説の日の、伝説のゲストボーカル。







最初で最後のオンステージから、数年後の。


小さな島国の、小さなプロダクションの、小さなプロジェクトが動き出して。


勇者の物語、始まります。