自由に羽ばたくキミが

来客者には来客者用のスペースがちゃんとあって、そこにもしっかりと喫煙スペースがある事だって知らない。


悪目立ちし過ぎる事を、理解していなかった。


そしてやっぱり怪訝な顔で見られる咲名、Tシャツにスキニー、キャップ、タバコを吸うために顎まで下ろされたマスクにサングラス。


顔はほとんど見えないのに、怪訝な顔をしている雰囲気が伝わってくる。


咲名は咲名で長い髪で顔を隠して、慌ててサングラス。
所属タレントが来ると聞いていた為にきっとこの人はタレントだ、と雰囲気で読み取る。


主に顔を隠すようなファッションと、オーラのせい。


直視は出来ないし、顔も向けられないけど。


「…おはようございます」


「え、は、こ、…こんにちは」


え、おはよう?なんで?……しまった、業界人はいつでもおはようだ!なんて、挨拶された事にテンパった咲名。


時間的にもこんにちはだけど!?と咄嗟に返した言葉はそのまま、こんにちは。


「失礼ですが、関係者の方ですか?」


関係者って?なに?そうだけど!?


「はい」


「どちらの?」


ヤバいなんかめちゃ警戒されてる、どちらのと言われれば経営者のなんですけど。


「社長…とか」


「社長…ですか、来社パスはお持ちですか?良かったら案内しますけど」


「いえ結構です、ここで待てと言われたので」


「パスは?」


え、照にぃの隣にいたからそんなの持ってない。
誰に口聞いてんの?社長令嬢だけど私!なんて言えないし。


「えと…」


「パスを持ってないのにここまで?」


声のトーンが下がりました!はい不審者確定!


「来客者様はまず来客者様用の部屋に通されるルールがありまして、喫煙はそこでと案内はされませんでしたか?」


「着いたばかりでそこに向かう途中でしたので」


「ここは社員専用です、まず途中で通る場所でもないのに?」


あ、もうダメだ私つまみ出される、そしたら照にぃに置いていきやがって!って文句言ってやろ、となんだか少し開き直ってさえきた咲名。