結局クレープ屋まで待てないとグズり出したおかげで通りすがりのコンビニへ。


灰皿になってしまったコーヒーの代わりに新しいものを手に、入口近くに置かれた灰皿で一服する照樹。


「タバコ吸うくせに禁煙車ってなに、センス悪」


「社用車なんだぞ、しかも重役用!」


「てことは親父か照にぃ用じゃん」


「おう、そして俺は本来なら乗せられる側の人間な?それだけじゃなくて社外の人も乗るし」


「なんか変なタバコ、急に増えたね」


「加熱式な、言っても向こう行く前だってあったろ」


「あれに手を付けるような意識の高い人間は私の周りにはいない」


と、目の前で紙巻きたばこを吸う照樹を指差しながら、笑ってる。


「あれ吸うと普通のタバコ吸えなくなる、臭くて」


「そいつァ愛せないね」


そう指に挟んだタバコを吐いた煙に包みながら見上げる横顔は、すごく綺麗で。


どこか幻想的でもあるのは、きっと異国の血がそうさせてる。


「外、出てねーな、全然焼けてねー」


「人種差別?向こうは晴れの日が少ないの」


「いやお前は限りなく日本が強めのハーフだけど肌は白が過ぎるから」


差別だな、と笑う横顔、ほぼノーメイクのせいか特徴的な切れ長タレ目が余計に下がる。


「つり目辞めたのか」


「今度はブスいじり」


「ブスじゃねーしイジってねーよ!」


「似合ってないって、最期笑われたから。両親譲りのその目を大事にしろってね」


母親に似てると言うと怒っていた咲名。
それがそんな話を愛おしそうにするもんだから。


「あの日にか?」


「あれは親孝行で言えば唯一と言えるね、あの場所に立ててよかった、見せれてよかったよ」


「一緒に立ちたがらなかったのか」


「そりゃあ後から言われたよ、誘えよって」


サプラーイズ!ってハグしたら納得してたと。


父親との思い出を、大切そうに聞かせてくれる。