「やほー照にぃ、お迎えありがと」


「ん、元気そうでなにより、腹減ってねーか?


咲名。」


照にぃ[てるにぃ]と呼ぶ声が懐かし過ぎて、思わず綻ぶ顔。
いい響きなのはその懐かしさなのかその声のせいなのか。


星城照樹[ほしじろてるき]、だいたいテルと呼ばれるし6つ下の咲名は妹のように呼ぶ。


そして星城咲名[ほしじろさな]、咲名と言う名前でありながら、未だ咲くことの無いその名前、名付け親泣かせである。


本来なら世界中に咲き誇ってもいいはずなのに。


「腹ぺこだし眠たいし…日本暑いなァ〜」


溶けそう、とほんのり茶色いロングヘアーをかきあげながら言う咲名の服装は黒のタンクトップに前が開けられたオフホワイトの長袖シャツを腕捲り、そして黒のスキニーにドクターマーチンの8ホールのブーツ。


サイズが異様に大きい所を見ると誰かのおさがりだろう。


サングラスのせいで余計に小顔に見える。


「まだ6月でしょ?なにごと?梅雨はどうしたジャパン!」


「もう真夏日が何日も続いてるし今年は雨が少ない、もう少しで梅雨明けするらしい」


「服間違えたわ、けど私大荷物無理と思ってボトムスはこれかライトブルーのスキニーかでさ」


「スキニーに変わりはねーんだな、はは」


そーそー、黒じゃないだけでマシかもだけど、と言うけれど多分そこじゃない、と正す。


「ビーサン、買ってやろうか?」


「いやマジそれ、どこ行くにも困らないと思ってマーチンで来たけど」


イングランド製のチェリーレッドいいだろ〜なんて嬉しそうに自慢してくる。
社長令嬢がそこまで嬉しそうにする程高額ではないけれど。


日本でいえば確かに、履いていれば目を惹くものでもあるし。


「ブルライのジョーがくれたんだ」


「…マジか!」


ロック界を代表するギタリスト。


ファンが聞いたら涙物だし、いや履くなよ飾れってなるレベル。


どんな繋がりだよとは聞くまい、分かり切ってるから。