家を出たあたしはいつもの通学路へは進まず、家の裏手へと回った。


裏には広い畑が広がっていて、今はなにも植えられていなかった。


「ラッキー」


小さな声で呟き、畑の中へ足を踏み入れる。


歩道を歩いて学校まで行くと時間が倍かかるけれど、この広い畑を突っ切れば10分ほど短縮できるのだ。


あたしは鞄を胸の前で抱えて走りだした。


畑の持ち主の人は気のいいご夫婦で、ここを歩いていたからと言って怒られることはない。


でも、万が一うちのお母さんが家から出てきてバレたら、それこそ雷を落とされてしまうだろう。


そうなるとせっかくの近道も台無しになり、遅刻は確定してしまう。


あたしはできるだけ身をかがめて小さくなり、なおかつ走る。


少し無理な体勢で畑を走っている時、見なれないピンク色の花が咲いていることに気がついた。