だから、言えない



隣に座っているおばあちゃんが、
これいいわよ、
と備え付けの化粧水を薦めてきたのを
適当にかわし、
ドライヤーのスイッチをいれる。


はーぁ……

8才の時から
ずっと憧れだった村薗先輩…

塚尾さんが好きなんだ…

塚尾さんには、
あんな色っぽい寝顔を見せるんだ…

塚尾さんにはキスするんだ…

塚尾さんにしか言わない言葉や
聞かせない声があるんだ…

私は全部知らないけど…

塚尾さんは全部知ってるんだ…


鏡に映る私は、
目に涙を溢れさせていた。

なんで泣くんだろう?

先輩が塚尾さんを好きなのは、
私に関係ないのに。

私なんか、
塚尾さんに比べたら何もしてなかった。

先輩に振り向いてもらうために、
何もしてこなかったのに、
今さら泣くなんて。

でも、塚尾さんと村薗さんが、
ベッドで愛し合ってる光景を想像したら
胸がズキンと痛んで、
やっぱり泣きそうになる。