でも、無理だった。


まだなにも言えていないのに。



まだなにも、伝えられていないのに。



好きだよ、愛してるよ。



その言葉だって、この10本の指に入るくらいしか言えていないのに。



それに、飛鳥にごめんって言えてないのに。



疑ってごめん。



飛鳥の言う通りだったよ。



落ち着いて考えればそれくらい簡単にわかるはすだったのに。



私だって、鮎斗くんと出かけたりした。



ただし、鮎斗くんにはこれっぽっちも恋愛対象として見ていない。



それと、同じだったんじゃん。



なのに私は疑った。そして、彼に嫌な思いをさせた。



そして、デートを台無しにした。



なのに、彼はいつも優しくて。私に対して一切怒ったりしなかった。



そして、そのままなにも謝れずに…。



「…あすか…っごめんね…私、酷いことをあなたに言った…」



もう、頬を濡らしているのが涙なのか鼻水なのかわからない。



ただ、顔はぐちょぐちょだった。



「生きてよお…っ、生きてよ…!!!!あすかあああああああ!」



もう、当たり前の言葉しか出てこなかった。



海は、そんな私を抱きしめる力を強めた。