「ねぇ、あれ……」
「え!? 高橋先輩!?」
「神亀の総長じゃん!」
「やっぱかっこいい……」
いくらかっこよくても、あたし以上に魁運とイチャイチャされたら……!
……って、あれれ?
クラスメイトの、主に女の子の声が、ちょっと黄色い?
マユちゃん先輩って、人気者?
それにしては、黒めいた空気はたいして変わっていないような……。
「きれいだよね。見た目は」
「でも急にイメチェンしたよね」
「アレはないわ。オネエはさすがに許容範囲外」
「総長がアレって、神亀だいじょぶ?」
「ビジネスじゃないの?」
「だとしてもキモくね?」
「昔のほうがだんぜんタイプ!」
言いたい放題だな……。
ああ言っておきながら、1人くらいは隠れファンいそう。
実はひそかに牽制しているタイプの井戸端会議でしょ。
「あー……ええっと……屋上で報告しよっか?」
「……そうだな」
気まずそうなマユちゃん先輩に、魁運は同意して立ち上がる。
ふたりの昼休みは!?
お弁当はどうするの!?
「ひとみんも一緒に行きましょ」
「え! あ、あたしが、その報告? ってやつを聞いてもいいんですか?」
「大丈夫よ。ひとみんにも関係あることだし」
あたしにも関係ある?
どういう報告内容なんだろう。
まあ、何はともあれ、魁運との昼休みが続けられるならどこへでもおともしますとも!
「……異端児と、異常者」
ボソッと、誰かが蔑むようにつぶやいた。
ふつうじゃない。
それは個性だと、マユちゃん先輩は教えてくれたね。
そうだよ、あたしたちは特別な個性が光ってる。
クラスメイトは自ら、モブを認めてるも同然。
比べて、あたしは、さながらヒロイン?
両手に花、ならぬイケメンを携えて、あたしはヒロインらしくごきげんに教室をあとにした。



