マンガでよく見る、あれ。
ヤンキーが捨て猫を拾い、かわいがる。
まさにあのシーン。
現実に起こると、やばい。ギャップの嵐。
ときめきレボリューション!
「……なにへらへらしてんだ」
「わっ!?」
ばさりと、頭にタオルをかぶされた。
上から聞こえていた息づかいが、正面まで下りてくると、そのタオルの上からさらに重量がかかる。
「え、あの、」
「じっとしてろ」
「はいっ」
何が何だかわかりませんが、じっとしてます。
柔らかい質感と、ほのかな石けんの香り。
わしゃわしゃとグレーの髪をかき回す乱雑さ、とは裏腹の、やさしい温もり。
タオル越しに感じる、彼の手のひらが、心音をかき立てる。
さながら、あたしは捨て猫役で。
彼なりに世話をしてくれていて。
ちょっと力加減がおかしいのは、慣れていないから。
そういうことですよね、金髪少年!
どこまでキュンキュンさせれば気が済むの! もっとやってください!
その不器用なやさしさ、優勝。全あたしが歓喜。
「あ、あの、ありがとうございます。見ず知らずのあたしを助けてくださって」
「……別に」
橋で倒れていたところに傘をさしてくれたのは、つい20分前のこと。
彼の厚意に甘え、連れられた先は、神社。
……の、裏手にある、一軒家。
昔ながらの日本式の建物は、ウチほどではないが、きれいに手入れや補強されていた。