家の敷地を抜け、振り返ると、立派な日本家屋が異様な存在感を放っていた。
あたしの家ってあんなに大きかったっけ。
大きいだけで、ストレスの塊だったけど。
反抗期の娘が家出したってことで、どうぞよろしく。
雨が降ってきた。
ひさしぶりの外で、行き先も特にない。
傘はリュックに入れ忘れた。失態。
容赦なく雨に打たれ、服も髪も濡れてしまう。
ただでさえ前髪が長く、某有名ホラー映画の長髪幽霊少女のよう。
道行く人には不気味がられた。ちょっとショックだったりする。
はてさてどうしよう。
家出して30分にして、早くも路頭に迷った。
生きるって、むずかしい。
これからどうすべきか……。
妹のところに行くか、安いホテルに泊まるか、野宿か……。
考えこみながら橋を渡っていると、足がすべった。
ドテン!
と、きれいなまでにすっころび、おでことコンクリートがぶつかる。
「いたた……」
足元を見れば、靴を履いていないことに今さら気づいた。
白い足袋がぼろぼろのびちょびちょだ。
幸先わるすぎ……。
「――あんた、大丈夫か?」
「……え?」
雨粒が途絶えた。
頭上に影が落ちる。
あたしに傘をさしてくれたのは、雨空の下でもきんぴかに輝く髪をした、目つきのわるい男の子。
「……ぎゃ、」
「?」
「ギャップ……!!」
「は?」
「あ、……いえっ! なんでも!」
あたしの口は、やっぱりゆるい。
キュンときた。
胸を痛く打たれた。
まさしく彼が、あたしの神様……!



