って、そういや、たしかに。
俺、無意識に、ひでえ口調でしゃべってたな。
普段、物腰やわらかな話し方を心がけていたのに、とっさに出るのはやっぱ“本物”のほうだったか。
俺としたことが。
小学生相手に何やってんだ。
「あー……こほん。け、ケガはない、かな?」
「あはは! ぎゃくの意味で、こわーい」
「おい殴るぞ」
「きゃははっ!!」
だから笑うとこじゃねぇって。
おかしな子だなあ。
まあ、いいか。こっちを気に入ってんならそれで。
「で、ケガは?」
「だいじょおぶ! お兄さんがたすけてくれたから」
「……そか」
女の子は体についた砂を払うと、俺の顔を見上げ、こてんと小首をかしげた。
「お兄さんは?」
「え?」
「痛くない?」
何が?
あ、スライディングした足とかケツとかのこと?
「全然。痛くねぇよ」
心配すんな、とグレーの髪をぐしゃぐしゃに乱してやる。
きゃー!なんて悲鳴を上げながらも、女の子はとても楽しそう。
頭を撫でる、といっても、こんだけちがうのな。
「お兄さん、あたしとあそぼうよ! ね!?」
「えっ、あ、おい!」
返事を待たずに、女の子は俺の手を引っ張っていく。
なんとなくこの手を引き抜けなかった。
蝉は、やっぱり、啼いている。



