北校に到着する手前で、魁運と別れた。
校門まで100メートルもないのに、裏門から行くのが日課だそうだ。
あたしもついていきたかったけど、そういう空気じゃなかった。
モヤモヤする。
兵吾郎と会ったことが原因じゃないことはわかりきってる。
朝のテンションはどこに行ったんだ! 戻ってこい!
初めて校舎に踏み入れても、たいして気分は上がらなかった。
1の4の下駄箱の、左角。
教室の席順も、同じ場所。
魁運が教えてくれたことを、脳内で反すうさせる。
あのイケボがすでに恋しい……。
廊下を歩き、1の4の表記を見つけて扉をスライドさせた。
「あの子、誰?」
「転校生?」
「ひえー、美人さーん」
「誰かのカノジョ?」
「やべ、タイプ」
ざわつかれているが想定内だ。
ガン無視して、左角まで一直線に向かう。
……ここだ。あたしの席。
席に座ると、ざわめきが増した。
「え……あそこの席って……」
「誰のだっけ?」
「不登校の子じゃなかった?」
「覚えてねー」
「うおっ、こっち見た!」
魁運は……まだ教室に来てない、か……。
教室をぐるりと一周見渡したのち、窓の外を眺める。
魁運に関わっちゃいけないワケって何なんだろう。



