マユちゃん先輩たち、神亀は、避難誘導を進めてる。
白雪組の面々は、その盾となってサポート。
敵も半分を切ったし、いいペースなほうかも。
それに気づいたのは、あたし以外に、もう1人。
「クソ! クソッ!! 逃がしてたまるか!!」
逆上した男が、客席に銃を向けた。
避難誘導を待つ一般人は、震え上がり絶叫する。
「キャッ……んぐ」
「さ、さけ、叫んだら、ま、また怒られ……っ」
「でも……!」
「こうなったらテキトーに人質とっ捕まえてトレードだ!」
「うーん……あ。今日くらい英雄ぶるのもありだよね」
阿呆な悪役から守るべく、勇敢に立ちはだかる。
そんな、かっこいいヒーロー。
ねぇ、なってあげてよ。
「兵吾郎!!」
「お、お嬢!?」
ヤクザのあんたが!
なれるよきっと、兵吾郎なら。
ヒーローになれるチャンスを、あたしが送ってあげる。
受け取れ!
投げ飛ばしたのは、まだ1つ持っていたピストル。
兵吾郎が難なくソレをキャッチすると、敵の男が引き金を引く。
「殺すぞおらあああ!!!」
「……目には目を、銃には、銃を」
――バン! バァン!
――……ッパチン!!
「あ゛ああ…………あっ? え? なんで?」
しゅるしゅる、煙がのぼる。
どちらの銃からも。
けれど、どちらの弾も、墜落していく。
「遅いんだよ」
「て、テメーのしわざか!?」
「弾に弾を当てただけだけど」
「あ、てた? そ、そ、そんなことが……!」
また銃をかまえた男に、兵吾郎はやれやれと肩をすくめる。
「だから遅いんだよ」
バンッ、と口から火を噴いた。
あとにかまえた、兵吾郎の銃が。
その弾丸は一直線に、敵の銃口にすっぽりはまる。
男がいくら引き金を引いても、もう、放射できない。
すべて、狙いどおり。



