ゴテゴテのメリケンをはめた男の拳をさらりとかわしながら、
「失礼、つぅちゃん」
「え? え??」
ゴミとクズに背を向け、かばうようにつぅちゃんを抱きかかえた。
そうです、アレです。
お姫様抱っこってやつです。
「ひ、ひぃちゃん!?」
「ちょーっと目ぇつむっててね」
つぅちゃんの頭をあたしの胸の内にうずめさせ、身を若干屈める。
それから、ひと息で、すっと。
体を回しつつ、左足で弧を描く。
すべった土が、あたしの都合よく冷風に乗った。
「うわああ目があああ!!!」
「痛い痛い!!!」
「おまえらどうした!?」
よっし、土埃を立てられた!
この隙に、ていや!
敵の手首に手刀を入れて、武器を落としてやったぜ!
「はい、つぅちゃん」
「え、えーっと?」
下ろしたつぅちゃんに、奪ったメリケンと果物ナイフを渡した。
「護身用に持ってて!」
「…………わ、わかった」
そのふたつがあれば、雑魚は殺れるよ!
あとは度胸だね! つぅちゃんならいける!
だけど……銃は、危険すぎるね。
「つぅちゃんに持たせるのも怖いし、壊しちゃおうか」
すれちがいざま敵2人のみぞおちを殴って、銃を持ったカスの元へ。
グエ、ギョエ、とうめき声が聞こえた気がするけど、無視。
「貴様! あの2人に何した!」
「いろいろ」
「ふ、ふざけやがって!!」
――バンッ!!
鋭い発砲音がつんざく。
だが、弾丸の走る道に、あたしはいない。
「っ!? どこだ! あの女どこに」
「こっちだよこっち」
こっちだって。下。真下だよ。



