ぼやけていた黒が、どんどん、どんどん、浮き彫りになっていく。
前回の比じゃない。
濃密な存在感に、心臓がみっともなく震える。
ピアスもネックレスも震えている。
気づいて。
苦しめられているのは、あなただよ。
ねぇ、魁運。
『あたしだけが逃げて、好きな人が独り苦しむなんて耐えられない。もう二度と、したくない』
『だったら、あたしのせいだろうが、一緒に苦しみたい』
その苦しさ、あたしも、わかりたい。
怖くないよ。
はじめて会ったときからずっと。
今も、恐れることなんてない。
自然と、一歩、踏み出していた。
「ひ、ひぃちゃん……!」
「……つぅ、ちゃん」
強く、手をつかまれた。
つぅちゃんは焦った様子でかぶりを振る。
行くな、行ってはいけない、と。
一心にあたしをつなぎ止める、やさしい妹に、力なくほほえんだ。
「つぅちゃん……あたしね、好きなの」
「っ、」
「彼を、愛してるの」
つぅちゃんは何か言いかけ、目を逸らす。
握った手をじっと見つめ……静かにそっと、手を放した。
ごめん、ありがとう、つぅちゃん。
行ってくるね。
守りたいもの、すべて、守り抜いてみせるよ。
「……魁運。ねぇ、魁運」
魁運に駆け寄ると、形容しがたい気配がよりいっそう強まった。
太陽が隠れているせいか、真夜中かと錯覚するほどほの暗く、肌寒い。



