それが、すべて。
家出のためじゃなく、魁運のため。
あたし、深く重く尽くすタイプなんです。
「ウチの息子、やるなぁ」
「茶化すなよ親父」
「もちろんおじ様にも会いたかったですよ!」
「はい100点! 息子をよろしく!」
「よろしくされました!」
「お、親父!!」
「今さら照れるな、照れるな。魁運、おまえだって、ひとみちゃんがいないとダメダメになるだろう?」
「な、な……」
ならない、って否定しない!?
魁運の耳、赤いよ! ピアスより赤い! かあいいね!
あたしたち相思相愛、愛の重さもぴったりんこね!!
今おみくじを引いたら、大吉なことまちがいなしだよきっと!
「あぁ、お義父様と呼ばれる日が、今から待ち遠しいよ」
「お、親父……!」
「ちょっと気が早いですよ、お義父様〜!」
「ひとみ!?」
全身真っ赤になる魁運を、おじ様は陽気に撫でた。
澄んだ空気に、笑い声がこだまする。
鮮やかな夕日が、ひときわ美しく沈んでいく。
こういう時間がずっと続けばいい。
ずっと……。
「あ、そうだ。ひとみちゃん」
続かなかった。
ぴたりと止んだな、笑い声。
おじ様、切り替えが早い!
「家で、お客様が待ってるよ」
「永鳥家に、あたしの客、ですか?」
はて。
誰だろうか。
ひゅるり、ひゅらり、生ぬるい風がスカートをめくった。



