そういえば、校内はすっかりお祭りムードだなあ。
ポスターや弾幕、色ごとに作られた衣装。
応援の練習の声があちこちから響く。
ちょっと来ないだけでこんなにも変わっちゃうんだ。
1の4も変わったのかな。
……あ、なんだか、ちょっと緊張してきた。
「ひとみ」
耳の奥にすっと溶けこむ、心地よい声。
ぎゅうっと強くなる、重なる手のひら。
それだけで、すごく安心できる。
あたしの隣には、心強い味方がいる。
魁運が、いてくれる。
「行こうぜ」
「うん!」
にぎやかに騒ぐ、1の4の教室。
その一歩手前で、すぅ、と大きく息を吸いこんだ。
――ガラガラガラッ!!
「おっはようございまーす!!」
教室の扉を勢いよくどかし、その音に負けないくらい腹の底から声を出した。
さあ、気分は道場破りだ。
今のあたしは、向かうところ敵なし。
まっくろくろすけ、かかってきなよ。
「あ、朝からなんだよ……」
「うわ。不登校児じゃん」
「学校やめたんじゃなかったの?」
「死神と仲良く登校?」
「来んなよ……」
相変わらずだね、みんな。
嫌気がさした空気感。むき出しの敵意。
朝日を拒絶した、痛々しい負の感情たち。
ちっとも変わってなかったね。



