ふん、ふふん、ふふーん。
へたくそな鼻歌を洗面所に響かせる。
洗面台の鏡に映るあたしは、どこから見ても、ごきげんルンルン。
紺色のネクタイ。
モスグリーンのチェック柄のスカート。
形だけ購入し、棚に眠っていた、北校の制服。
遅くなっちゃったけど、ようやく今日から本格的に出番だ。
「北校生ぽい! あたしもちゃあんと高校生だ!」
夏休みが終わり、2学期が始まる。
休み明け初の登校日である今日を、どれだけ待ちわびていたことか……。
楽しみすぎて、今朝は目覚ましが鳴る前に起きちゃった。
「あとは髪型、髪型っと……」
いつもなら髪をとかすだけだった。
これからはしっかりおめかしするんだ!
長い前髪を巻きこみながら、みつ編みをつくっていく。
センターから右と左に分け、みつ編みをふたつ。
ピンで留めて、ちょっとほぐして。
うん、いい感じ!
魁運がきれいだって言ってくれた、透明な瞳。
こんなあからさまに露出させてみたのは初めて。
へへん。ちょろいな、あたし。
ついでにおでこもあらわになったけど、ケガが治っていてよかった。
「ふはぁ……。あ、はよ。早いな」
「魁運! おはよう!」
洗面所にやって来た魁運は、まだ眠たそう。
ただでさえ目つきがわるいほうなのに、さらにつり上がっている。
永鳥家にお世話になってから1週間。
まだ慣れないことばっかり。
彼の寝起き姿も全然見慣れない。
毎日ドキドキしてる。
今日も寝起き姿を拝められて感激です。尊い。