あご先まで池に浸かったあたりで、ようやく花に手が届いた。
勝手に池に立ち入ってごめんなさい。
スイレンの花をひとつ、ゆずってくれませんか?
どうか、どうか。
ふたりで、ずっと、大切にするから。
「お願いしゃっす……!!」
慎重に近づき、そうっと両手でスイレンを摘み取った。
瞬間。
「うぎゃっ!?」
ズン、と、足が落ちた。
しまった! 油断した!
真ん中だけさらに深い!?
池というより底なし沼やん!!
息ができない。
けど、スイレンだけは守りとおす。気合いや。
こんなところでくたばるか!
あたしはあきらめがわるいんだ!
腕と足を大きく振り、水をかき分けていく。
わずかな酸素をたらしながら、必死に天を目指した。
「っぷはあ! はあ、はあ……っ」
なんとか地上に出れた……。
体力ごっそり持ってかれた。疲れた。しんど。
地面に両腕を置き、ひとまず休憩。
そうしている間に、身体が寒さを実感してくる。
「さっむ……。早く上がらな、キャッ!?」
えっ。右足、つった。
痛い! めっさ痛い!
なんで今!? 池から出ようとしただけだよ!?



