家を離れ、無心で歩いていたら、橋のところまで来ていた。
魁運と出会った場所。
あの日みたいに空が暗い。
……あぁ、もう、あなたに会いたい。
初めてケンカした。
ううん、あれはケンカじゃないね。
あたしが一方的に追い詰めただけ。
魁運にとっては、幽霊が暴走したのは数時間前くらいの感覚。
想像以上に混乱していただろうに。
あたしが焦ったせいで、もっと困らせた。
でも。
だって。
見えてしまったんだよ。
あの黒い手が、いとしいその首に手をかけて。
殺されるかと思った。
1秒でも早く、救いたい、と。
「……はあ、バカ。あたしの、大バカ!」
ひとりよがりだ。
自分勝手だ。
魁運の“本当”は伝えても、あたし自身のことはなんにも明かしていないじゃないか。
何も知らないのに、あたしの言葉をうのみにするはずないよね。
好きってだけじゃ、信じてもらえない。
「仲直りしなくちゃ!」
あたしのことも、気持ちも、ちゃんとさらけ出す。
きらいになってても、あきらめない。
がんばる。
魁運のためならがんばれる!
あっ、そうだ!
誠意と本気度が伝わるようにプレゼントしよう!
……でも、何を?
「う~~ん…………ん? ん!?」
アレはどうだろう!?
ちょうど視界に入った、山。イッツ山。
あそこにある池に、咲いているらしい。
あの、スイレンが。
例の花を贈ったら、あたしの真心もばっちり伝わるのでは!?
ナイスアイデア、自分!
善は急げだ!!



