「あ、あの、大丈夫ですか……」
たまご全滅に立ち直れないまま、ひかれかけた女性に手を差し伸べる。
しかし、いっこうに手を取ってくれない。
「あのう……?」
「っ、や……こ、来ないで……っ」
「え、」
風が、止まない。
あたしの周りだけ、凍えてる。
敵も、そうじゃない人たちも、みんな、同じ顔。
おばけでも見ちゃったような。
この色のない瞳に、すべて、焼きついてしまっている。
「助けなければよかった?」
「ひっ……い、いえ、その……」
「ごめん。それでもあたし、助けちゃうよ」
たまごが報われないね。
行き場のなくなった、この手も。
ショックにショックが積もって……けっこう、痛い。
そういえば、小学生のときも、中学生のときも、こんなことがあった。
あたしは別に怖くないのに。
わるいことだってしてなかったのに。
よかれと思って行動したら、悪目立ちした。
あのときと、まったく一緒。
みんなが、あたしに……あたしだけに、負の感情を送ってくる。
黒。
黒。
黒。
ちっともきれいじゃない。
吐き気がするほどむなしい。
こんなの、慣れてる。
だから。ねぇ。
この世界を、地獄に堕とさせないで。



