これは死神と総長がふたりがかりで倒す、胸アツ展開!?
魁運が共闘してるところを間近で観戦できるなんて!
あたしってばツイてる!
ぜんぶこの目に焼きつけよう!
くるくる目元をマッサージし、準備万端。
目を凝らせば、敵がニヤリと笑った。
え? 今の何……?
ザアッ……!と逆風が吹きすさいだ。
髪の毛をうしろに持っていかれる。
うしろに何かあるの?
――ブルン! ブルン!
風音にまぎれ、うっすら鼓膜を叩いた、あの異音。
魁運とマユちゃん先輩は気づいてない。
あたしには、まちがいなく聞こえた。
あれは、たしかに、バイクの排気音。
かなり遠くからだった。
対角線上の路地に、黒のモヤがかかる。
……あそこか!
その路地からバイクがハイスピードで飛び出してきた。
大通りを横切ってこっちに来る気だ。
それこそ、大通りを往来する一般人を、ひき殺す勢いで。
「ヒャッハー! どけどけー!!」
「うおっ!?」
「きゃあぁぁ!!」
「逃げろ……!」
「どくのはてめぇじゃ阿呆!!」
あたしはぱんぱんに詰まったエコバッグを、運転手の顔面にぶつけてやった。
ぐしゃ、と何かがつぶれる。
敵の天狗になった鼻か?
……い、いやちがう! たまごだ!
「あ、ああ……たまご全滅だ……」
ごめんね、たまごさん。存在忘れてたよ……。
タイムセールで勝ち取ったのに……っ。
人助けだもん、しょうがない。……うん、しょうがない……。はあ……ショック。



