おっけー。作戦、決まり!
土地勘がなくても、路地に逃げて隠れる程度なら楽勝でしょう。
つぅちゃんはスカートとジャケットを棚に戻した。
同じ形、同じ大きさの、その手のひらをぎゅっと握る。
敵に悟られてはいけない。
ほかの客に注目されすぎてもいけない。
ナチュラルに、迅速に、落ち着いて。
「つぅちゃん、行くよ」
「うん、ひぃちゃん!!」
せーの、で、店の扉を開けた。
「あっちの古着屋さんも見に行こ!」
「あ、待ってよ、ひぃちゃん!」
スタートは、駆け足。
どんどんスピードを上げて。
向かい側に着いたら、猛ダッシュで路地へ。
「……ひとみ? なんで路地に……」
よし。魁運がこっちに気づいた。
魁運のほうを一瞥し、合図を送りながら、路地の奥に進んだ。
足音が反響する。
ものすごい数だ。
背後を見なくても、魔の手が迫っているのを感じる。
つぅちゃんの手は、やや汗ばんでいた。
「チッ。いつ勘づかれた!?」
「知らねぇよ!」
「ごるぁああ! 待ちやがれええ!!」
「……そのくせえ口、閉じろや」
曲がり角を過ぎた、刹那。
キュ、と方向転換した、靴のかわいらしい音。
の、反面、どぎつい罵声。



