僕からの溺愛特等席



 着いた先は水族館で、驚いた。これは本格的なデートコースだ。



周りには恋人同士と思われる男女がひしめきあい、腕を組んで歩いたり、魚を見るふりをして恋人を見つめるなど様々な楽しみ方をしている。



そんなカップルまみれの中、私は戸惑いと嬉しさを持ってただひたすらに楽しんだ。



大水槽の前で長いこと魚を見て、ふれあいコーナーに行って二人で存分に満喫した。



糸くんは恐る恐るといった具合にヒトデを掴んで、


「なんか、意外と硬くて、なんかヤバいですよ……」とあまりにも嫌そうな顔をしていたのがとても可愛かった。



 とまあ、しっかり年甲斐なくはしゃいでしまっていた。


 水族館の、帰り道にあるショッピングモールに入ってぶらぶらした後、駐車場へ向かい車を見つけて、乗り込んだ。



 そして、すっかり日も暮れてきた頃、私は大事なことを思い出した。



……そうだった、結局楽しむだけ楽しんだ私だったが今日はこれを聞こうと思っていたのだ。



「あのね、糸くん。楽しむだけ楽しんでこんな事言うのもなんだけど………」


「なんです?」


キーを差しながら首を傾げこちらを見る糸くん。

「野間さん?」

流れるように聞くつもりだったのだけれど、二人きりの車内で私が吃ってしまったせいで糸くんはしっかりと耳を傾けている。


「えっと、糸くんはさ、その……幼なじみのことが今でも好きなんだよね?」