「聞いてます?」
「よし、じゃあ、もうそろそろ帰ろうかな」
明日も仕事だし、と腰を上げる。
白々しいなあと思いながらも、
実際、福祉の仕事はなかなかハードなのだ。
早く帰ってお風呂入って寝なくちゃ。
「あ、逃げた」
「お会計お願い」
「はいはい。分かりましたよ」
糸くんはとぼとぼ伝票を持ってやって来る。
会計を済ませると、糸くんはお店の前まで見送ってくれた。
「ありがとうございました。また来てくださいね」
彼はいつも扉の前で、繊細なガラス細工のような儚い笑みを浮かべるのだ。
その笑顔にちょっとだけキュンとして、癒されるのもまた、事実だ。



