「喫茶店探しはするけれど、実際に店に足を運んだのはたった二件だけだよ。
私、腰が重いから、結局、家から近い糸くんのお店に来ちゃうんだよね。
仕事でへとへとになっても、ふらっと立ち寄れるから」
なんで私は糸くんに、言い訳をしているんだ。
考えれば、全然悪いことなんてひとつもしてないじゃないか。
でも、糸くんのしょんぼりした目を見ると何故か罪悪感に潰されそうになるのだ。
まったく、おかしいなあ。
糸くんは、尚も口をとがらせる。
「もし、僕の店がちょっと離れたところにあったら野間さんは来てくれないんですか?」
店に人が居なくなると糸くんは途端に砕けてしまう。
他にお客さんがいたら、こんな風に口を尖らせたりはしない。



