もしも、ただ好意的に送ってくれるつもりなのだとしたら、失礼極まりない想像だけれど。
「送られるのは、嫌かな?」
私が長く口を閉ざしているから、旭さんは不安げだった。
「あ、いや、そういうわけじゃ」
私は曖昧に返事する。
「そうか、なら……」
旭さんは視線を落として、さっと私の手を掴み、ひょいっと引き寄せられる。
「えっ!?」
なんて、大胆なんだ。驚きで足がもつれて、旭さんにぶつかる。
「ちょっと待って兄さん」
今までじっとしていた糸くんが、その掴まれた私の手を、引き剥がした。眉を寄せ、不快感を滲ませる。
「なんだ?」
「送るなら僕が……」
「いやいや」と旭さんが馬鹿にしたように言う。
「糸? そういうのは好きな子にしか言っちゃダメだぞ、勘違いしたら可哀想じゃないか」
旭さんはちらっと私を見て、続けて糸くんに挑発するように笑う。
「は? それ、どういう……」
糸くんは感情を露わにする。声も低い。この会話で何かを汲み取った様子だった。
「分かるだろ。だから、糸は大人しくしておけ。………さあ三春さん、行こうか」
例によって私は腕を掴まれ、旭さんの車に乗せられる。
窓の外には、糸くんが何かを考えるように険しく、鋭い眼差しで私達の乗りこんだ車を見ていた。



