僕からの溺愛特等席



 そう言えば、よくここに来ていた時は、変なからかわれ方をしていたな。


それすらも、もう昔のことみたいに感じる。だけれど、今日雰囲気は、いつものそれとは違った重い空気が漂っていた。



「えっと、どうかした?」


「それは割とこっちのセリフでもあるんですけど」


 まあ、確かに。


ボトボトで濡れ鼠となった私は、彼の言う「どうした」に当てはまる。


 けれど、私が言いたいのはそういうことではなく、何か言いたげに糸くんが視線を送ってくることに対してだ。



「あの……」本当にどうしたの? と疑問を重ねようとしたとき、糸くんが口を開いた。



「僕のこと、もう飽きましたか?」


 糸くんはしゃがみこんで、私より低い位置から覗き込む。


その言葉の意図に私は首を捻った。髪から戸惑いの雫がしたってくる。


「飽きたも何も………」


「僕って、面倒くさがりなんです」



「え?」突然、何の話なのだ。


「お客さんにタオルは貸してあげても、拭いてあげないし、泥酔してる女の介抱なんて絶対しない。僕って、そういう人間なんです」



「ええっと……その節は大変お世話に」