ゆっくり朝食を楽しむでもなく、糸くんはさっさと食べ終えてキッチンで準備を再開する。
それを眺めながら私はトーストを口に運び、サクサクと耳心地のいい音を立てながら食べていると、
ドアがガチャガチャと鳴らされた。
振り向くと、扉のガラス部分から、男の人が覗いていた。
誰かに似ているなと思った。
そうだ、糸くんに似ているんだ。
「糸くん! 誰か来てるよ」私が言うと奥から
「はいはい」と鼻から抜ける声で返事をした。
ドアを見てがっかりしている。
「ほんとに来てるよ……」
歓迎の空気ではなく、どちらかと言うと残念そうにロックを外す。
「おはよう。約束通り来たよ」
歯を見せて笑うその人は、糸くんより十センチくらい高い背丈で、顔は……二人そっくりだった。
「別に、約束なんてしてないだろう。つうか、何しに? 仕事は?」
険しい表情で糸くん尋ねた。
「昨日、言っただろう。有給、溜まってたから消化中なんだよ。
実家に帰ったら、父さんが糸の店でも見てくればって言うから。心配でさ」



