トーストのいい香りがする。
「おはようございます」いつものエプロンをつけた糸くんがキッチンから出てくる。
「おはよう。シャワー借りたけど、良かった?」
「ええ。もちろん」
おもむろに近づいてきた糸くんは、ちょっと失礼しますと言って私の首に顔を寄せた。
「ええっ」
「じっとして……」
私が硬直してる間、彼はすんすんと嗅ぐ。
「僕と同じ匂いがしますね」
彼は満足気に口の端を持ち上げて微笑んだ。
かと思うと、平然とカウンターに二人分のトーストと、ミネストローネを置く。
えっと………何だったのだ今のは。
「さあ少し遅めの朝ごはん、食べましょう」
「そ、そうだね!」
私たちは並んで座る。
今のやり取りは、匂いフェチなるものなのだろうということにして、
「いただきます」と共に、空っぽの胃袋に暖かいスープを流し込んだ。



