「そうですか。じゃあやっぱり、お詫びしてもらっていいですか?」
糸くんの口から飛び出したのは、そんな甘いとは程遠い言葉だった。
「ええっと、なんの事でしょう」
私は引き攣った笑いを浮かべる。
目の前の彼は、よからぬ事を考えているような顔で、にやっと笑った。
どうやら家に帰るのは先になりそうだと悟る。
「お詫びに、あと二時間だけ添い寝して下さい。僕、それで満足なんで」
糸くんは布団をめくって、そこに入るように促す。
悪戯に微笑んだ彼は、人を惑わす綺麗な顔をした悪魔だ、と直感する。
「ほら、早く。お詫びしてくれるんでしょう?」
「糸くんが悪い顔してる」
「たまにはこういう僕も良くないですか?
」
たまには、の頻度じゃない気がする。
だって、私は糸くんの言動にいつも惑わされ、どぎまぎしてるんだから。
「ほら、早く」
糸くんに急かされ恐る恐る入る。
少々ためらっていると、肩をそっと抱き寄せられすっぽりと彼の腕の中に収まった。
そんな私を見て糸くんは安心したように相好を崩し、目を閉じた。



