「はい。野間さんがどうされたんですか」冷ややかに聞く。
「野間さんの家ってご存知ですか? 飲み会で酔っちゃって、帰れそうにないんです。家も分からないし……」
なんで、そんなことになってるんだよと怒りが湧いてくる。
お持ち帰りされたらどうするんだ。
シラフでも無防備なのに、お酒なんか入ってたら、壊滅的なはずだ。
「でしたら、僕が迎えに行きますので店を教えて頂けますか」
「いやいや、そこまでしてもらえないです」
「いえ、心配ですから僕が送ります」
「でも……」
正直な所、僕も野間さんの家を知らない。
でも、こういう奴に持ち帰られるくらいなら、僕が頂こう。
押し問答になるだろうという予想は外れ、相手は逡巡したのちに、
「そうですか、では、お言葉に甘えて」
とおずおずと言った。



