ホールの片付けをしていると、電話が鳴った。
こんな時間に？ と首を捻りながら受話器をとった。
「はい。喫茶 ヴァン・ダインです」
「あ、良かった出てくれた」
相手は男だった。人混みにいるのだろう、がやがやと人の声が電話口から聞こえる。
「何の御用でしょうか。ご予約は承っていませんが」
「ああ、違います、違います。こんな時間にすみません。
介護福祉センターの佐原と申します。あの………野間 三春さんとはご知り合いでしょうか？」
まさか、野間さんのことを聞かれると思っていなくてドキッとする。
佐原、とは前に野間さんが話してた仕事場の先輩だったか。
まさか、男だったとは知らなかった。僕は穏やかでは居られない気持ちになる。
