「この際だから聞いちゃうけど、三春ちゃん、あの喫茶店の彼とはどうなのよ」


華ちゃんが耳元で聞いてきた。


「ええ? ……それって、糸くんのこと?」


「そう、その糸くんよ」


「どうって、私の方が聞きたいくらいだよ。なんか、よく分からない変なこと言ってくるし……」



「なになにー。変な事って!」



眼を輝かせる華ちゃん。
この酔っぱらいは何を聞いても話すと思っているのだろうか。



そうだ、全くその通りだ。



今の私の口は風船より軽い。




「で、どんなことよ?」


「えっとねえ、お店がもしも離れてたら来ないかとか、他所の店で浮気かとか……わけわからないの……」



「ほほー」


華ちゃんは鳩のような相槌を打った。謎は解けた、みたいな顔をしている。



「どういうつもりだろう?」


「どうって………そんな分かりやすくアピールしてくれる人って珍しいよね。でもそれに気づいてない方がよっぽど珍しいかも」