「あ、三春さーん」
ロッカールームへ戻る途中、またしても声をかけられた。
少し先で、相馬さんが自販機の前の椅子に腰掛けていた。
こちらを見て、大きく手を振る。
相馬さんは先月入居された佳代さんのお孫さんだ。
「こんにちは。今日も佳代さんのお見舞いですか?」
「そう。ばあちゃんのこと心配でさ」
そう言って相馬さんは、困ったように眉を下げる。
遊ばせた明るい髪色に、くっきりとした二重の彼は、鎖骨あたりまでボタンが外してある白いカッターシャツを着ている。
一見、遊び人のように見える彼の職業は、美容師だ。
恐らく私と同い年か、もしくは年上だと思う。
「佳代さんいつも喜んでらっしゃいますよ。家族の方との触れ合いは、私達がいくら頑張っても代わりにはなりませんから」



