悩むなあ。
気分的にはホットサンドだけれど、動き回っている糸くんを見ていると、
出来ればあまり手間のかからないものを頼みたい。
そんな風に悩んでいる間に、ご飯時を過ぎたのか、お客さんが減ってきていた。
どうやら、私が来店した時間がちょうどピークだったようで、
八時になればお店にはいつの間にか静かなBGMがじんわり浮かび上がっていた。
「決まりましたか?」
カウンター越しに糸くんが聞いてくる。
「すごく悩んでたみたいですけど」
「うん。どれにしようか迷ってて、やっぱりホットサンドにする」
変な気を回すのはやめて、私は欲望のまま注文した。
「かしこまりました」
糸くんがホットサンドを作っている間に、私は鞄から小説を取り出す。
ミステリファン御用達。
コナン・ドイルの作品は何度読んでもワクワクする。
好きな文章があればそのページに付箋を貼って、いつでも直ぐに見れるようにしてある。



