僕からの溺愛特等席



糸くんは少し誤解されやすいんだと思う。
本当はとっても優しくて思いやりのある暖かい人なのに


「みんなはまだ糸くんの真の魅力に気づいてないのかも」




 私が優しいと、そう思っていても大学内での彼の評価は、「冷たい、クール」といった素っ気なさを評価されるものが多かった。




思い出す限りでも、声をかけてくれる女の子を片っ端から無視していたし、


これは伝聞なのだけれど、色々な女の子から告白を受けていた糸くんだったが、

それを「興味が無い」「面倒臭い」のひと蹴りで何人も泣かせたと言う噂まであった。



 そんなのは所詮噂に過ぎない。こうやって話している糸くんは紛れもなく「とても、優しい人だ」



「野間さんに……」


糸くんが口を開く。非常にわかりにくいが、口角を少し上げ、嬉しそうにする。

まるで、春が来て雪が溶けたみたいな感じだった。


「そう言って貰えるだけで、僕はどこまでもいける気がします。あなたにだけ伝わっていれば僕はもう、十分です」



私は胸を掴まれた感覚になった。彼からの告白を受けて、私たちは一体どこに向かって進んでいるのだろう。