私の問いかけに一瞬面食らった糸くんだったが、すぐに意地悪な笑みを浮かべる。



「何言ってるんですか、僕の職業は喫茶店の店主ですよ」


「ちょっと思っただけだもん」

「小説、書いててほしかったですか?」



「うーん。もし書いてたら、読んでみたいなあ。糸くんのメモ書き見たらね、素っ気なくて淡白だけど、でも、温かみのある文章だったから、いい物がかけるんじゃないかなって」


なんだか上から目線な事を言ってしまったかな、ちょっと言い方が悪かったかもしれない。


「ご、ごめんね。変なこと言って」



 とんでもない、そう言っていただけて嬉しいです、と恐縮していた糸くんだったけれど照れが半分困った半分という具合に言った。



「それは多分……野間さんの贔屓目ですよ。僕は、ただ淡白で冷たい人間ですから温かさとは無縁の人間です」


「そうなのかなあ。私は糸くんが冷たい人間だなんて思ったことないけど」



泥酔した私を迎えに来てくれるし、店に訪れるといつもガラスのように繊細な、それでいて柔らかい笑みで迎えてくれる。


そんな彼が冷たいなんて誰が思うのだろう。