これは、いくら私でも分かる。

少女マンガとかでデートの時にするヤツだ。

なんで?

だって、奏先輩には茜先輩がいるのに…


だけど、なぜか奏先輩を問い詰める事はできなくて…

私は、黙ってそのまま歩いた。


だって、奏先輩のポケットはとても暖かかったから…

奏先輩にぎゅっと手を握られるのも、なんだか心地よくて…


私たちは、そのままたくさんのアトラクションに乗り、昼食を食べ、最後に観覧車に乗った。

奏先輩に「どうぞ」と言われて私は進行方向に背を向けてシート中央に座る。

すると、奏先輩が「詰めて」って言うから、奥に詰めると、向かいに座るとばかり思ってた先輩が私の隣に座った。

「え、あの、あれ?」

先輩が前を向いて座れるように後ろ向きに座ったのに、なんで?

「森宮と同じ景色が見たいから。」

それってどういう… ?

隣に座った奏先輩はなぜかとても無口で…

さっきまであんなに喋ってたのに。

「森宮、俺… 」

観覧車が頂上に差し掛かった頃、奏先輩が口を開く。

何?

私が首を傾げて見ると、なんだかいつもの奏先輩とは違って…

「森宮、俺… 」

「はい。」

私は返事をするけど、奏先輩はやっぱり無言で…

間もなく地上に着くという頃、ようやく再び口を開いた。

「森宮、俺、森宮のこと… 」

「はい。」

「森宮のこと… 」

「はい。」

「あの… あ、美音って呼んでいい?」

「…? はい。」

と返事をしたところで、地上に着いた。

「お疲れ様でしたぁ。」

係員の人が挨拶と共にドアを開ける。

なんだかしっくり来ないけど、とりあえず、観覧車から降りる。


奏先輩が言いたかったの、ほんとにそんな事だったのかなぁ。



私たちはそのまま手を繋いでバス乗り場へ向かい、帰路に就いた。