「奏くん、本当にありがとう。
よかったら、晩ご飯、一緒にどう?」

母が声を掛ける。

「ありがとうございます。
でも、うちでも準備してるので、今日は
帰ります。
お正月はご迷惑だと思いますので、また
再来週来ます。
あ、でも、森宮、もし分からない所が
あったら、メールでも電話でもして来いよ。
年末年始は部活もないから、週末じゃ
なくても来てやれるし。」

「はい。
奏先輩、ありがとうございました。」

私はぺこりと頭を下げた。

「じゃ、失礼します。」

奏先輩は爽やかに挨拶をして帰っていった。



「美音、奏くんって、いい子ね。」

お母さんが言う。

「うん。
教え方も、すっごく分かりやすいし、なんか
ほんとは私、勉強できるのかもって気が
してきたよ。」

私が言うと、お母さんは笑った。

「ふふっ
それは頼もしいわね。
期待してるわ。」